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「いいね」で賠償命じる初判断、原告代理人は「特定の事例における特定の判断」と強調
2022年10月20日 17時48分

ジャーナリストの伊藤詩織さんを誹謗中傷するツイートに「いいね」を押したことが伊藤さんの名誉感情を侵害したとして、自民党の杉田水脈衆院議員に慰謝料など220万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が10月20日、東京高裁であり、石井浩裁判長は、請求を棄却した1審・東京地裁判決を変更し、杉田議員に55万円の賠償を命じた。

ツイッターの「いいね」で不法行為を認めた判決は初めてとみられる。

ただ、代理人の佃克彦弁護士は「この判決が『いいね』が不法行為になったという先例として世の中に広まっていくのは本意ではない。特定の事例における判断で、人の悪口に『いいね』を押せば損害賠償と言っている判決ではない」と強調した。

ジャーナリストの伊藤詩織さんを誹謗中傷するツイートに「いいね」を押したことが伊藤さんの名誉感情を侵害したとして、自民党の杉田水脈衆院議員に慰謝料など220万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が10月20日、東京高裁であり、石井浩裁判長は、請求を棄却した1審・東京地裁判決を変更し、杉田議員に55万円の賠償を命じた。

ツイッターの「いいね」で不法行為を認めた判決は初めてとみられる。

ただ、代理人の佃克彦弁護士は「この判決が『いいね』が不法行為になったという先例として世の中に広まっていくのは本意ではない。特定の事例における判断で、人の悪口に『いいね』を押せば損害賠償と言っている判決ではない」と強調した。

●「特定の事例における特定の判断」

名誉感情侵害は、社会通念上許される限度を超える侮辱行為であると認められるかどうかが判断基準となる。

石井裁判長は、「いいね」を押す行為が名誉感情を侵害するかどうかの判断材料について、行為者の主観や行為者と被害者との関係、「いいね」が押されるまでの経過も検討する必要があるとした。

佃弁護士は「『いいね』の意味を解釈するには、これまでの経緯や主観といった事情を見なければ判断できないということをきちんと示してくれた。文脈から判断することは、重要、かつ、当然のことだ」と評価した。

一方で、あくまで今回は杉田議員と伊藤さんとの関係やこれまでの経緯に照らして「いいね」が違法と判断されたものであり、「特定の事例における特定の判断だと認識してもらいたい」と話した。

●伊藤さん「恐怖を感じた」

今回の杉田議員の「いいね」行為について、伊藤さんは「私を守るようなツイートをしてくれた人に対して個人攻撃するものもあって、私にダイレクトに届かなかったとしても、恐怖を感じるものだった」と振り返り、「画期的な判決」と評価した。

「『いいね』は、指先一つでできてしまう行為です。簡単にできてしまう『いいね』という行為で、誰かを誹謗中傷する言葉が拡散されてしまう、賛同していると思われてしまう可能性がある、ということを判決で認めてもらった」

また、今回の訴訟を起こしたことで「表現の自由という言葉が何度も聞こえてきました」と振り返り、「表現の自由という一言で言葉の暴力を許してしまうことを、一度立ち止まって考えるきっかけとなるような判決ではないか」と話した。

●【動画】判決後の囲み取材の様子

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