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ピアノ可のマンションが知らぬ間に「ピアノ不可」になっていた――どうすればいいの?
2014年10月08日 20時53分

グランドピアノの演奏、10時~20時までOK――。こんな条件で借りたマンションなのに「他の住人からピアノの音に苦情を言われて困っている」という女性の悩みが、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに投稿されている。

投稿によると、女性がピアノを練習する時間は1日に30分から1時間。時間帯は、平日が午後4時~8時の間で、土日は午後に練習しているという。ささいな苦情はあったものの、2年間は平穏に過ぎ、契約を更新したそうだ。

ところが先日、「下階の入居者から苦情があった」と仲介業者が伝えてきた。仲介業者の話だと、なんと下階の入居者は「ピアノ不可」の条件で契約しているという。家主も仲介業者も、以前は防音について深く考えずにピアノ演奏を許可していたが、考えを改め、新しい契約は「ピアノ不可」としているのだという。今後も「ピアノ可」に戻すつもりはないそうだ。

女性が、今のままピアノの練習を続けることは可能だろうか。また、演奏ができないとしたら、誰かの責任を問うことができるのだろうか。不動産の法律問題にくわしい瀬戸仲男弁護士に聞いた。

グランドピアノの演奏、10時~20時までOK――。こんな条件で借りたマンションなのに「他の住人からピアノの音に苦情を言われて困っている」という女性の悩みが、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに投稿されている。

投稿によると、女性がピアノを練習する時間は1日に30分から1時間。時間帯は、平日が午後4時~8時の間で、土日は午後に練習しているという。ささいな苦情はあったものの、2年間は平穏に過ぎ、契約を更新したそうだ。

ところが先日、「下階の入居者から苦情があった」と仲介業者が伝えてきた。仲介業者の話だと、なんと下階の入居者は「ピアノ不可」の条件で契約しているという。家主も仲介業者も、以前は防音について深く考えずにピアノ演奏を許可していたが、考えを改め、新しい契約は「ピアノ不可」としているのだという。今後も「ピアノ可」に戻すつもりはないそうだ。

女性が、今のままピアノの練習を続けることは可能だろうか。また、演奏ができないとしたら、誰かの責任を問うことができるのだろうか。不動産の法律問題にくわしい瀬戸仲男弁護士に聞いた。

●女性はピアノの練習を続けられるか?

「仮にピアノを演奏している女性を『Aさん』、苦情を言っている階下の入居者を『Bさん』と呼んで考えてみます。

結論からいうと、Aさんはピアノの練習を続けることが難しいでしょう。

なぜなら、『グランドピアノの演奏、10時~20時までOK』という契約をかわしたのはAさんと大家で、Bさんは無関係だからです。したがって、Bさんはこの契約に縛られないので、Bさんの苦情は正当だと考えられます。

もしもAさんが、苦情を無視してピアノ演奏を続けた場合、音の程度によっては、Bさんから差止請求または損害賠償請求(慰謝料請求など)をされる可能性があります」

●ピアノがひけないのは誰の責任なのか?

しかし、Aさんには何の落ち度もない。理不尽ではないだろうか。

「そうですね。結局、今回のケースで一番責任が重いのは、『Aさんとの約束(契約)を破った大家』と考えられるでしょう。

『ピアノ可』や『ペット可』といった事項は、マンション全体に大きな影響を及ぼします。こうした事項については、大家がマンション全体に『統一的な基準』を設定するべきでしょう。

今回のケースでは、大家はAさんとは『ピアノ可』と契約し、Bさんとは『ピアノ不可』と契約しているようです。

このように、ピアノ演奏の可否について、借りた人ごとに異なる基準を設定するのは、契約相手の信頼を裏切る行為です」

つまり・・・?

「大家はAさんとの契約で『このマンションはピアノ可』としたのなら、他の人との契約も同じ条件にすべき義務があったと考えられるということです。

こう考えると、大家の義務違反は明らかです。Aさんは大家に対して、契約違反による損害賠償請求ができるでしょう。

その中身は、引越し代金・引越し代金以外の転居費用に加え、場合によっては精神的損害の賠償(慰謝料)を請求できそうです」

●管理会社に責任はあるか?

Aさんとしては、「『ピアノ不可』になった時点で仲介業者が知らせてくれれば、苦情を言われなくて済んだのに・・・」と思うかもしれない。今回の場合、仲介業者の責任は問えるのだろうか?

「仲介業者が、単に仲介業務だけしか行っていない場合、責任を問うことは難しいでしょう。なぜなら、仲介業者には、仲介業務終了後の条件変更を告知・説明する義務はありません。それは大家の義務だからです。

ただし仮に、仲介業者がマンションの管理業務も行っている場合は、責任を問える可能性があります」

瀬戸弁護士はこのように指摘する。

「国土交通省によると、『借主または近隣在住者からの苦情に対して、事情を聴取し、現状の確認を行う。賃貸人に現状の報告を行い、処理方針を協議する』ことは、管理会社の義務に含まれます。

今回のケースに当てはめてみましょう。まず、大家が『ピアノ不可』を検討する際、管理会社は大家に対して、Aさんとの契約上は『ピアノ可』となっていることを踏まえて対応を話し合うべきでしたが、それをしませんでした。

しかも、『ピアノ不可』に変更されたことをAさんに伝えなかったのですから、管理会社の義務を果たしているとは言えません。大家と同様に、管理会社も責任を負うものと考えられそうです」

まとめると、今回のようなケースに遭遇した場合では、大家や管理業者を相手取って交渉するのが一番のようだ。気分良くピアノをひくためには、さまざまな費用を負担してもらう約束を取り付けたうえで、思い切って引っ越すのがいいのかもしれない。

(弁護士ドットコムニュース)

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