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「ライバル社の就活セミナーをスパイして」学生がこんな依頼を受けたら断るべきか?
2014年09月20日 15時22分

他社の新卒採用セミナーをスパイしてきてほしい――。大学4年生のDさんは、東京都内の某企業の人事部で働く大学時代の先輩からこんな風に頼まれ、応じるかどうか悩んでいるという。

この先輩は、新卒採用の戦略立案にたずさわっていて、後輩の学生たちに頼んで競合他社の採用情報を探る「スパイ作戦」を思いついたそうだ。上司からも許可を得たという。その作戦の内容とは、就活が可能な大学3~4年の後輩に頼んで、他社のセミナーや説明会・面接に参加してもらい、その内容や人事担当・面接官の名前をレポートしてもらうというものだ。

Dさんは、先輩の頼みとはいえ、スパイ活動に協力するのは、抵抗を感じるという。そもそも、ライバル企業の採用情報を入手するために、学生を「スパイ」として送り込むことは、法的に問題ないのだろうか。不正競争防止法にくわしい高島秀行弁護士に聞いた。

他社の新卒採用セミナーをスパイしてきてほしい――。大学4年生のDさんは、東京都内の某企業の人事部で働く大学時代の先輩からこんな風に頼まれ、応じるかどうか悩んでいるという。

この先輩は、新卒採用の戦略立案にたずさわっていて、後輩の学生たちに頼んで競合他社の採用情報を探る「スパイ作戦」を思いついたそうだ。上司からも許可を得たという。その作戦の内容とは、就活が可能な大学3~4年の後輩に頼んで、他社のセミナーや説明会・面接に参加してもらい、その内容や人事担当・面接官の名前をレポートしてもらうというものだ。

Dさんは、先輩の頼みとはいえ、スパイ活動に協力するのは、抵抗を感じるという。そもそも、ライバル企業の採用情報を入手するために、学生を「スパイ」として送り込むことは、法的に問題ないのだろうか。不正競争防止法にくわしい高島秀行弁護士に聞いた。

●「産業スパイ」になるのか?

「いわゆる『産業スパイ』は、不正競争防止法違反です。

この法律では、『企業の営業上の秘密を不正に取得すること』を禁止していて、これに違反すると、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金が科せられることとなっています(刑事責任)。

また、それによって、相手企業に損害が出た場合には、損害賠償責任を負うことになります(民事責任)」

そうなると、他社の採用情報を探るため、学生を送り込むことはどうだろうか?

「ポイントは、採用セミナーや説明会、面接の内容が『営業上の秘密』にあたるかどうかです。

営業上の秘密とされるためには、次の4要件をすべて満たす必要があります。

(1)公然として知られていないこと

(2)秘密として管理されていること

(3)経済的価値のある技術上または営業上の情報であること

(4)秘密として保護されることに正当な利益があること」

就活セミナーや説明会、面接の内容はどうだろうか?

「就活セミナーや説明会、面接の内容は、一般的に、秘密として管理されている情報とは言えないでしょう。

他に漏らさないという守秘義務を就活生に負わせた上で、情報を提供しているわけではありませんからね。

つまり、営業秘密にはあたりませんから、不正競争防止法違反にもならないと思います」

●「業務妨害」とされる可能性アリ

そうすると、今回のような「スパイ活動」に問題はない、ということだろうか。

「いいえ、セミナーや説明会程度ならともかく、面接まで行くと問題がないとは言えません。

就職する気もないのに、採用面接を受けることは、相手に嘘をついて無駄な採用面接をさせることになります。つまり、相手企業の採用活動業務を妨害したとみなされる可能性が出てくるのです。

こうした場合、偽計業務妨害罪(刑法233条・3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)に該当するおそれがあります(刑事責任)。また、企業が被った損害の賠償責任を負う可能性があります(民事責任)」

高島弁護士はこう警鐘を鳴らしていた。Dさんは、先輩の怪しげな誘いをきちんと断り、自分自身の就活に力を注ぐのが良さそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

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