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乳腺外科医の準強制わいせつ事件で最高裁弁論、弁護側改めて無罪主張「検察の主張は大胆」
2022年01月21日 17時46分
#乳腺外科医

手術直後の女性患者にわいせつな行為をしたとして、準強制わいせつ罪に問われた男性医師の上告審弁論が1月21日、最高裁第二小法廷(三浦守裁判長)で開かれた。判決期日は追って指定される。

最高裁は2審の判断を変更する場合に弁論を開くことが多いため、男性に懲役2年の逆転有罪判決を言い渡した2審・東京高裁判決が見直される可能性がある。

弁護側は「科学捜査研究所の鑑定結果の検査プロセスや計算の過程を検証できる客観的なデータは何一つなく証拠排除されるべき。検察側証人として出廷した医師の証言には科学的証拠としての価値は全くなく、独自の見解だ」と無罪を主張した。

検察側は「女性の話は客観的証拠や周りの人の証言で裏付けられている。そのこと自体が現実を語っているという何よりの証拠だ。女性の行動はせん妄とはかけ離れており、女性の語った内容は現実の出来事だ」などと上告棄却を求め、結審した。

手術直後の女性患者にわいせつな行為をしたとして、準強制わいせつ罪に問われた男性医師の上告審弁論が1月21日、最高裁第二小法廷(三浦守裁判長)で開かれた。判決期日は追って指定される。

最高裁は2審の判断を変更する場合に弁論を開くことが多いため、男性に懲役2年の逆転有罪判決を言い渡した2審・東京高裁判決が見直される可能性がある。

弁護側は「科学捜査研究所の鑑定結果の検査プロセスや計算の過程を検証できる客観的なデータは何一つなく証拠排除されるべき。検察側証人として出廷した医師の証言には科学的証拠としての価値は全くなく、独自の見解だ」と無罪を主張した。

検察側は「女性の話は客観的証拠や周りの人の証言で裏付けられている。そのこと自体が現実を語っているという何よりの証拠だ。女性の行動はせん妄とはかけ離れており、女性の語った内容は現実の出来事だ」などと上告棄却を求め、結審した。

●弁護団「無罪確定は間違いない」「検察の主張は大胆」

弁論後、弁護団は都内で会見を開いた。

弁論後に支援者を前に会見する弁護団 弁論後に支援者を前に会見する弁護団

主任弁護人の高野隆弁護士は「検察側の主張は『女性の証言が母や看護師などの証言と整合するから真実だ。幻覚ではなく現実の体験だ。だから他のことは検討する必要がない』という大胆なものだった。最高裁が破棄自判(最高裁自ら原判決に代わる判決をする)して、無罪確定することはほぼ間違いないと私どもは確信している」と述べた。

趙誠峰弁護士は「供述に対する相変わらずの依存の強さを感じた。検察官自身もせん妄下における幻覚への理解が間違っており、正しく理解していないと感じた」と話した。

●これまでの経緯は?

男性医師は2016年5月、東京都足立区の病院で、女性の乳腺腫瘍の摘出手術を担当したあと、全身麻酔から覚醒途中だった女性の着衣をめくり、胸をなめるなど、抗拒不能に乗じてわいせつな行為をおこなったとして、準強制わいせつ罪で逮捕・起訴されていた。

一審・東京地裁(2019年2月20日)は、(1)女性が麻酔による「せん妄」という状態だった可能性がある、(2)女性の乳首から男性医師のDNAが検出されたが、会話や触診などで付着した可能性があり、DNA鑑定の信用性に疑いがあるとして、犯罪の証明ができなかったと判断した。

手術後の患者にわいせつ、医師に無罪「せん妄の可能性」「DNA鑑定の信用性に疑い」(2019年02月20日) https://www.bengo4.com/c_1009/n_9270/

地裁判決後の記者会見で、男性医師は「警察の非科学的な捜査手法があった」と怒りをにじませつつ、「100日以上拘束されて、社会的信用や職を失った。警察から一方的な情報による報道や、それに悪乗りしたネット上の悪意ある書き込みで、私や家族、周りの人間が大きく傷ついた」と明かした。

手術後わいせつ事件、無罪の医師「捜査が非科学的」「報道やネットの投稿で傷ついた」(2019年02月20日) https://www.bengo4.com/c_1009/n_9271/

一方、わいせつ被害を訴えた女性は「被害者は今後どうやって性犯罪にあったこと立証すればいいのですか」と涙ながらに語った。

女性の代理人は​​「判決は、非常に雑な事実認定で驚いている。病院側が、被害者の証言だけで、逮捕・起訴した事件と喧伝しているので、そのような事件と誤解されているが、客観的証拠があって逮捕に至っている」と話した。3月には女性を支援する弁護団が結成された。

医師無罪判決、わいせつ被害訴えた女性「どう立証すればいいのか」会見で涙(2019年02月20日) https://www.bengo4.com/c_1009/n_9273/
手術後わいせつ事件、女性を支援する弁護団結成 「非科学的な判決」と批判(2019年02月20日) https://www.bengo4.com/c_1009/n_9369/

●高裁の判断は?

高裁判決(2020年7月13日)は、一審が「せん妄の影響を受けていた可能性があり、信用性に疑問が残る」としていた女性の証言について、「迫真性が高い上、知人に送ったLINEメッセージとも符合する。男性医師がベッドの左側にいたことなどは、他の証人の証言と整合しており、犯行の直接証拠として強い証明力を有する」と認めた。

せん妄の可能性については、「事件当時せん妄に陥っていなかった、もしくは、仮にせん妄に陥っていたとしても、せん妄にともなう幻覚は生じていなかったと認められる」として、信用性の判断に影響しないとした。

また、一審が「信用性があるとしても証明力が十分であるとは言えない」としたアミラーゼ鑑定とDNA定量検査については、「科学的な厳密さの点で議論の余地があるとしても、女性の証言と整合するもの」として、信用性を補強する証明力が十分あるとした。

乳腺外科医「わいせつ」事件に逆転有罪、「せん妄による幻覚」認めず…女性の証言「強い証明力」(2020年07月13日) https://www.bengo4.com/c_1009/n_11462/

高裁判決後、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いた男性医師は「怒りと憤りを覚えています。やっていませんし、無罪です。公正であるべき裁判官が公正な判断をしないことに怒りを覚えている」と話した。弁護人も「非常識かつ非科学的な判決」と批判した。

「一昔前の冤罪判決そのもの」 乳腺外科医に逆転有罪、弁護側は上告へ(2020年07月13日) https://www.bengo4.com/c_1009/n_11468/

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