新しい家に引っ越すと、前の住人宛てのハガキや封筒がポストに届くことがあります。
こうした他人宛ての郵便物を誤って、あるいは意図的に開封してしまった場合、法的に問題になるのか気になるところです。
弁護士ドットコムにも「誤って配達された郵便物を勝手に開けたら罪に当たらないのか?」といった相談が寄せられています。
SNS上でも、自分宛ての郵便物を家族に勝手に開封されて、ゴミ箱に捨てられていたといった体験談が見られ、家族内でもトラブルは起きているようです。
では、他人宛ての郵便物の無断開封は犯罪にあたるのでしょうか。家族内や別居中の夫婦間ではどうなるのでしょうか。萱垣佑樹弁護士弁護士に聞きました。
●「信書開封罪」にあたる可能性
──宛名が自分でない郵便物を開封すると、犯罪になりますか。
他人宛の郵便物を無断で開封する行為は、「信書開封罪」(刑法133条)に該当する可能性があります。
この罪は「正当な理由がなく、他人の信書を開封した者」に適用され、1年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金が科されます。
──誤って配達された場合はどうですか。
誤配達であっても、宛名が他人であると認識して開封した場合には、罪に問われる可能性があります。
一方、宛名が他人であることに気づかず開封した場合には、故意がないため、信書開封罪は成立しません。
●家族や夫婦間でも犯罪のおそれ
──同居家族や離婚協議中の夫婦の間で開封した場合はどうなりますか。
宛名が自分以外の郵便物を開封すれば、たとえ家族間であっても犯罪とされる余地があります。
同居している場合には、家族の黙示の承諾や同意が認められる余地もありますが、離婚協議中や別居中の夫婦間では、その推定は働かないと考えられますので、より慎重な対応が求められます。
したがって、他人宛ての郵便物は開封せず、誤配達の場合は郵便局に連絡するのが望ましいといえます。家族間であっても、プライバシーに十分な配慮が必要です。
●日本郵便「誤配達は最寄りの配達局などにご連絡を」
萱垣弁護士の解説はここまでです。日本郵便の公式サイトでは、次のように案内されています。
<万一、他人さまあての郵便物が配達され開封してしまった場合には、お手数ですが、郵便物を補修の上、郵便物の表面に誤って開封したこと、氏名、住所を記載した付せん等を貼っていただき、郵便差出箱(郵便ポスト)に投函していただくか、郵便物の誤配達があったことを最寄りの配達局、又はお客様サービス相談センターにご連絡ください。>