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アイドルライブ「オタ芸が迷惑」訴訟、観客が敗訴…運営者に求められる責任とは?
2017年04月29日 08時31分

アイドルライブでの「オタ芸」の影響で演奏が聞こえなかったとして、男性客が主催者に約100万円の損害賠償とライブのやり直しを求めた裁判の控訴審で、大阪高裁は4月27日、訴えを退けた一審判決を支持して、男性客の控訴を棄却した。

毎日新聞によると、男性は2014年1月、神戸市内でおこなわれたアイドルライブで、一部のファンが「オー、オー、オー」などの大声を出したことで、ライブが聞こえず、主催者が退場させるなどの措置を怠ったと主張していたという。

田中敦裁判長は「音楽鑑賞の仕方は様々で、観客のかけ声は雰囲気を高揚させる側面もある」と指摘。主催者にファンを退場させる義務はなかったとした。

アイドルライブでは、ファンによるかけ声は、盛り上げるために当然のようにおこなわれているが、状況次第では不快に思う人がいるのかもしれない。また、かけ声だけでなく、その場でジャンプを繰り返したり、サイリウムを過度に振り回したりすると、周りの観客に迷惑をかけることもある。

主催者側は、迷惑行為を把握した場合、どのように対応することが求められるのか。もし怠った場合、損害賠償責任を負う可能性もあるのか。河西邦剛弁護士に聞いた。

アイドルライブでの「オタ芸」の影響で演奏が聞こえなかったとして、男性客が主催者に約100万円の損害賠償とライブのやり直しを求めた裁判の控訴審で、大阪高裁は4月27日、訴えを退けた一審判決を支持して、男性客の控訴を棄却した。

毎日新聞によると、男性は2014年1月、神戸市内でおこなわれたアイドルライブで、一部のファンが「オー、オー、オー」などの大声を出したことで、ライブが聞こえず、主催者が退場させるなどの措置を怠ったと主張していたという。

田中敦裁判長は「音楽鑑賞の仕方は様々で、観客のかけ声は雰囲気を高揚させる側面もある」と指摘。主催者にファンを退場させる義務はなかったとした。

アイドルライブでは、ファンによるかけ声は、盛り上げるために当然のようにおこなわれているが、状況次第では不快に思う人がいるのかもしれない。また、かけ声だけでなく、その場でジャンプを繰り返したり、サイリウムを過度に振り回したりすると、周りの観客に迷惑をかけることもある。

主催者側は、迷惑行為を把握した場合、どのように対応することが求められるのか。もし怠った場合、損害賠償責任を負う可能性もあるのか。河西邦剛弁護士に聞いた。

●主催者は、公演の進行の妨げとなる物品の持ち込みを禁止できる

「主催者側の基準として、全国の主催者団体で構成されるコンサートプロモーターズ協会(ACPC)の『ライブ・エンタテインメント約款』というものがあります。

この約款には、主催者が、入場者に対して、公演の進行の妨げとなる物品の持ち込みを禁止できる規定があります。最近のコンサートだと、公認のサイリウムやペンライト以外の持ち込みや、一定以上の大きさのうちわの持ち込みを禁止しています。

『ハロー!プロジェクト』などのアイドルでは、メンバーごとにイメージカラーがあります。ファンは推しメンカラーのペンライトを振るのですが、両手の指の間にサイリウムを3〜4本持つ行為が問題となり、『バルログ』(ストリートファイターのキャラクター)なんて言われたりもしました。

また、今回問題になったヲタ芸を披露する人もいます。これらの行為は、他の入場者にとって目障りにも耳障りにもなりかねないわけです。ハロプロなど、有名なアイドルグループの現場ではそういった行為は減りましたが、地下アイドル業界ではまだまだヲタ芸をするファンは少なからずいます」

●「迷惑ヲタ」を退去させなかった不作為に対して損害賠償責任が生じる可能性も

「さて、約款上、主催者は、迷惑行為をする入場者に対して、即時退去を要求できるという規定になっています。ただ、観覧する権利を持つ入場者を退去させることができるのは、よほどの妨害行為がない限り難しいでしょう。

そうである以上、主催者に対する損害賠償請求が認められるのは、たとえば、犯罪行為を現におこなっている入場者を退去させなかったというような、極めて限定的な場合になると考えられます。

もっとも、最近は、映像技術や音響技術の向上により、コンサートの演出もかなり高度かつ繊細になってきています。逆にいえば、数千人いる中の1人の奇行によって演出が台無しになることも考えられます。

今後は、迷惑ヲタを退去させなかったという主催者の不作為に対して損害賠償責任が生じる可能性は十分考えられます」

(弁護士ドットコムニュース)

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