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大川原化工機の冤罪事件、二審も「捜査は違法」 無実知らぬまま死亡した元顧問の遺族「人質司法がなくなること祈る」
2025年05月28日 18時38分
#冤罪 #大川原化工機 #違法捜査 #警視庁公安部

冤罪事件に巻き込まれた化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)が国と東京都に損害賠償を求めた国家賠償訴訟の控訴審で、東京高裁(太田晃詳裁判長)は5月28日、1審に続いて警視庁公安部と検察の捜査の違法性を認定し、国と東京都に計1億6600万円あまりを支払うよう命じる判決を下した。

現職の警察官が法廷で事件を「捏造」と証言したことが注目された裁判。東京高裁は捏造という言葉は使わなかったものの、1審と異なり事実上、「捜査機関が事件を作り出した」と判断したかたちとなった。

この事件で逮捕され、無実を知らないまま亡くなった元顧問の遺族は「良い警察官と悪い警察官の戦いだった。まずは腐れ切った組織の内部改革を早急にして、真の意味での警察になってほしい」と話した。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

冤罪事件に巻き込まれた化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)が国と東京都に損害賠償を求めた国家賠償訴訟の控訴審で、東京高裁(太田晃詳裁判長)は5月28日、1審に続いて警視庁公安部と検察の捜査の違法性を認定し、国と東京都に計1億6600万円あまりを支払うよう命じる判決を下した。

現職の警察官が法廷で事件を「捏造」と証言したことが注目された裁判。東京高裁は捏造という言葉は使わなかったものの、1審と異なり事実上、「捜査機関が事件を作り出した」と判断したかたちとなった。

この事件で逮捕され、無実を知らないまま亡くなった元顧問の遺族は「良い警察官と悪い警察官の戦いだった。まずは腐れ切った組織の内部改革を早急にして、真の意味での警察になってほしい」と話した。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

●社長「自分たちのやってきたことは間違ってなかった」

控訴審の判決後、大川原化工機の社長らが東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開き、国や東京都に対して上告しないよう強くうったえた。

社長の大川原正明さん(76)は冒頭、次のように述べた。

「私はいままで、大川原化工機を噴霧乾燥器(ふんむかんそうき)の専門メーカーとして日本で一番、世界でも負けないような会社にするんだと社員に話しかけてきました。

そして、この噴霧乾燥器は平和に利用されるものに限って自分たちは仕事をするのだとずっと言ってきた。

今回、自分たちがやってきたことが間違っていなかったと裁判所が認めてくれたことが非常に印象に残っています」

違法な取り調べを受けた元取締役の島田順司さん(72)は、逮捕後に亡くなった元顧問である相嶋静夫さんへの思いを語ったうえで、再発防止の必要性を強調した。

「相嶋さんと『一杯やろうね』と言ってから、もう5年になります。今日の判決で相嶋さんに『一杯できるよ』と言いたいです。

警察と検察の捜査や起訴、勾留の違法性が認められたわけなので、ぜひ、このようなことが起きないような再発防止策を早急に明らかにしてほしい。

同時に、このようなことが起きないような法整備を急いでいただきたいです」

相嶋さんの長男(51)は、警視庁という巨大組織の中で捜査の問題点を証言した警察官がいたことに言及し、こう述べた。

「最後まで嘘をついた警察官もいたが、『許せなかった』とコメントしてくれた警察官もいて、良い警察官と悪い警察官の戦いだったのかなと思います。

今回の判決を警視庁や警察庁は正面から受け取って、今後争うことにエネルギーを使わず、まず腐れ切った組織の内部改革を早急にやっていただき、真の意味の警察になってほしい。

父が病気になってなかなか保釈されなかった部分について、残念ながら判決の中で裁判所の責任を認める記述はありませんでした。人質司法が早くなくなることを祈っています」

画像タイトル 記者会見では、無実を知ることなく亡くなった相嶋静夫さんの写真が立てられた(2025年5月28日/弁護士ドットコム撮影)

●逮捕された3人のうちの1人は起訴取り消し前に死亡

冤罪事件の発端は、警視庁公安部による"ストーリーありき"の捜査だった。

大川原化工機が製造する噴霧乾燥器について、警視庁公安部は2020年3月、軍事転用が可能な機械であるとみなしたうえで、それを中国などに不正に輸出した疑いがあるとして、大川原社長ら3人を逮捕。

その後、東京地検が起訴したが、初公判が始まろうとしていた2021年7月に起訴が取り消された。

3人は保釈を何度も請求したが、裁判所が認めず、顧問だった相嶋さんは起訴が取り消される前に亡くなった。

大川原社長らは国家賠償訴訟を起こし、1審の東京地裁(桃崎剛裁判長)は2023年12月、警視庁と検察の捜査の違法を認め、国と東京都にあわせて1億6200万円あまりの賠償を命じた。

その後、双方が控訴。大川原化工機側は控訴審で新たな証拠を提出し、「捜査機関による事件の捏造」が認定されるかが注視されていた。

画像タイトル 大川原化工機の冤罪事件の経緯

●捜査批判した警察官3人の証言がなければ「今回の判決はなかった」

東京高裁は判決で、東京地検が大川原化工機の3人を起訴した判断について、「合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑がなか った場合に該当する」などと認定。

警視庁公安部が立件する際の根拠としていた経済産業省の輸出規制省令について、公安部の示す解釈に経産省が当初懐疑的だった点などに触れ、捜査の方法に加えて、そうした状況で地検が起訴したことも違法と判断した。

大川原化工機側の代理人をつとめる高田剛弁護士は、判決について「控訴審で認めてほしかった事実がほぼ全面的に認められ、逆に東京都や国が主張したことはほぼ排斥された。判決全体を見ると、警視庁公安部による事件の捏造を認定したものと評価できる」と説明した。

そして、全面勝訴に至った要因として、法廷で現職の警察官3人が捜査の問題点を証言した点を上げ、次のようにうったえた。

「3人の証言がなければ今回の判決はなかったのは明らかです。東京都は3人の証言を『壮大な虚構』と言いました。

警視庁はいまだに、この3人の警察官が良くなかったのだと総括している可能性がありますが、今回の判決を重く見て、事実を再検証したうえで壮大な虚構という表現を撤回してほしい」
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