この事例の依頼主
40代 男性
ご相談者様は、交差点内で他車両に衝突され、自車が横転する交通事故に遭われました。同乗していた配偶者様、お子様も怪我をされ、通院の後、後遺障害の等級認定等を行政書士事務所に依頼されていました。しかし、後遺障害等級認定申請後、自賠責保険事務所(※後遺障害等級認定をする機関)とのやりとりが円滑に行われておらず、該当とも非該当とも判断がされず、「事案返却」という形で宙ぶらりんの状態でした。また、後遺障害部分については保留にしたまま、配偶者様、お子様の分も含め、行政書士事務所から損害賠償額請求書案を受領していましたが、内容について納得ができず、請求ができていらっしゃいませんでした。配偶者様、お子様の分も含め、ご自身が行政書士事務所とのやり取り等をされていらっしゃいましたが、お仕事が忙しかったこともあり、上記の状態のまま時間だけが過ぎていくような状況のときに弊所をお知りになり、ご相談に見えられました。損害賠償請求に関しては、請求額を行政書士事務所に算定してもらっても、請求・交渉はご自身で行わなければならないことから二の足を踏んでいらっしゃるような状況でした。また、後遺障害等級認定については、「事案返却」がされた状態で、今後どのように事件が進むのかがはっきりしておらず、大変不安に思っていらっしゃる状況でした。ご相談時に、弁護士がご依頼をいただけば「代理人」として相手方保険会社との間に入って交渉を行い、ご自身で交渉していただく必要がないこと、後遺障害等級認定申請についても、見通しを含めてご説明をさせていただいた結果、ご依頼をいただくことになりました。
ご相談の後、ご依頼を受け、まずは、配偶者様とお子様の損害賠償請求を行いました(お二人は、事故の規模に比して比較的軽症で後遺障害は残存していませんでした。)。並行して、ご本人様の後遺障害等級認定をすすめることになりました。「事案返却」がされていたのは、自賠責調査事務所から等級認定にあたり、追加で受傷部位の画像検査が求められていたためでした。ご本人様には医療機関に検査予約をとっていただき、画像検査をしてもらうことになりました。検査日当日、医療機関側からご本人様に対して自賠責調査事務所が求めるような検査はしないとお話があった旨、ご連絡をいただきました。状況がつかめなかったため、すぐに医療機関側に連絡を入れて担当医師との面談を依頼し、当日中に担当医師、ご本人様、弁護士の三者で面談の機会を持つことができました。医療機関側に対し、画像検査の必要性等を説明させていただき、改めて画像検査のお願いをしました。結局、医療機関側の理解は得られず、こちらが求めていた画像検査を行ってもらうことはできませんでしたが、ご本人様納得の上、検査画像がない状態で改めて後遺障害等級認定を行うことになりました。自賠責調査事務所が求めていたが画像がない状況で再度後遺障害等級認定申請をすれば同様の返答(最悪の場合、再度の「事案返却」)になることが十分想定されましたので、今回の申請においては、画像検査の必要性は承知していること、一方で、検査画像以外でもその他の事情から画像検査の結果から自賠責調査事務所が得ようとしている事情については十分推認ができること等を記載した書面を作成し、申請を行いました。結果、認定の理由においてご本人様が訴えていらっしゃった症状がほぼ全て認定される形で後遺障害が認定されました。その後、上記認定結果を前提として相手方保険会社に対して損害賠償請求を行い、ほぼ、当方の主張が認められる形で和解となりました。この頃には既に配偶者様、お子様の和解もできており、事故から約3年半後、解決となりました。
弊所にお見えになったのは事故からもうすぐで3年が経とうとしていた時期でした。治療自体は終了していらっしゃったので解決までが長引いている点に引っかかりを覚えましたが、お話をお伺いするうちに相手方保険会社、ご依頼先行政書士事務所、自賠責調査事務所等関係先が増え、ご自身にとって初めて遭う交通事故だったこともあって、今何をしなければならないか、解決までの方向性が見えていらっしゃらない状態だったように思います。私は、相談時には相談者様が「何がわかっていて何がわかっていないか」に気を配っています。「わかっていないこと」や「わかっているつもりのこと」が正しくわかれば、解決に1歩も2歩も近づくと思うからです。このときも治療が終了された段階であったにもかかわらず、また行政書士事務所から説明を受けていらっしゃたと思われたにもかかわらず、改めて交通事故の流れ(含、対保険会社対応)から、後遺障害等級認定申請手続きのしくみ・流れ、今後の賠償交渉の流れ等私なりの切り口で説明をさせていただき、まずは「わからないこと」を解消してもらいました。ご本人様にとってもご家族にとっても、今回の交通事故は「解決しないといけない」ものであるにも関わらず、「よくわからないし、あまり思い出したくない内容」だから後回しになっている部分が多かったのです。しかし、上記のように「わからないこと」さえ解消してもらえば、何をすべきかがクリアになり、「解決しないといけない」という想いはお持ちでしたので、ご依頼者様と弁護士でペースを合わせて解決まで走り切ることができました。また、医療機関に依頼した画像検査を断られるというハプニングがありました。適切な証拠をどのように収集するかを考えるのが弁護士の仕事の一つでもあると思いますが、証拠が常に存在するわけではなく、今回のように医療機関に検査を断られることもあるわけです。このようなときに、証拠がないと言って諦めることはかんたんですが、どうすればそのウィークポイントをケアできるか考えるのも弁護士の重要な仕事だと思います。もちろん、不利な状況には変わりないのでその点をご依頼者様にしっかり説明し、ご理解を得てしかすすめることはできません。最終的には「そこまでやってもらったなら何も言いません、中谷先生におまかせします。」と言っていただけるほどに信頼を寄せていただきましたので、この事件はご依頼者様と一緒に勝ち取った結果だと思っています。ご依頼をいただいて半年弱での解決となりました(その間、後遺障害等級認定の審査期間が3か月ほどありましたので、実質は3か月間です。)。もう少し早くご相談に見えていただければ、と思わなくもないですが、解決に向かっていることが実感いただけたのでしょう、お会いするたびに事故のことでお話をお伺いするときの表情が柔らかくなり、お電話でお話をしていても心が軽くなっていらっしゃるなというのがわかるくらい、声に表情が出ていらっしゃいました。無事解決ができて本当に良かったです。ご依頼前、解決の方向に踏み出せなかったのは意思疎通の些細な行き違いだったのかもしれません。しかし、関係者が増えるに連れ、その行き違いは大きくなり、特にご家族の安全を守るドライバーであったご依頼者様にとっては大きなご負担だったのだと思います。ご依頼をいただくことでその負担を少しでも分けていただき、関係者としっかりコミュニケーションをとることで状況把握に努めて最善解を導く、また、状況変化にも対応し、その時々で最善解を志向する、そうすることで、お力になれたのではないかと思います。