この事例の依頼主
男性
経営している会社がテナントとして借りている賃借物件について大家から立ち退きを求められました。立ち退きの理由は、高齢者である大家が病気のため、私の会社が借りている物件に住まわざるを得なくなったということでした。それまで、大家さんは、ビルの2階に住んでいましたが、心臓病などのために、そのビルの階段を上り下りできなくなったそうです。そのため、私の会社が借りているのは平屋の建物でしたので、階段の上り下りが不要な、この物件に住む必要が生じたとのことでした。話し合いでは折り合いがつかなかったので、大家さんが私の会社を被告として立ち退き請求の訴訟を裁判所に提起しました。そこで、私は、第一審(地方裁判所)では、別の弁護士に依頼しました。すると、第一審の裁判所は、大家さんの事情に正当な事由があると認めて、264万円の立退料と引き換えに立ち退けという判決を下しました。
第一審の弁護士は、立ち退き訴訟のような不動産に関する訴訟が得意ではなかったようでした。その弁護士さん自身も自信がなさそうで、控訴するなら、不動産を専門にした弁護士に依頼した方が良いとおっしゃいました。色々と探したところ、調べた範囲で最も不動産に強い弁護士だろうということで依頼しました。控訴審(高等裁判所)では、和解期日が設けられ、弁護士が不動産の知識を総動員して、妥当な立退料などについて裁判所で熱弁を振るわれました。弁護士は、単なる弁護士としてだけではなく、不動産鑑定士として、賃料や立退料の鑑定評価なども多数経験されておられるためか、裁判官の心証をかなり動かしたように見受けられました。その結果、最終的に、立退料400万円で立ち退くという和解をすることができました。第一審の判決をそのまま維持する高裁の判決になってもおかしくないところ、弁護士の活躍によって、立退料を1.5倍以上にすることができました。大変感謝しています。
第一審では立退料と引き換えに立ち退けという判決が下されているため、高等裁判所で大家の正当事由を争って、立ち退き自体をしなくても良いとする逆転判決を得るのは困難であることが予想できました。そこで、立退料の金額を増額する方向に持って行けないかと工夫しました。物件は住宅地ではなく、商業地に所在する物件で、賃料の査定などが比較的難しい場所にあるものでした。不動産鑑定士として、賃料や立退料の鑑定評価を多数してきた経験が物を言ったのではないかと思います。とにもかくにも、第一審で判決された立退料の1.5倍以上の立退料に増額できたことで、依頼者に大変喜んでいただけました。