この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
相談前の状況
相談者は、建売住宅販売をしているデベロッパーですが、都内23区城西地域でミニ開発をした際、後日所有者から境界を侵害しているというクレームを受けました。隣地とは高低差があり、境界線は明確であるにもかかわらず、戦前の土地図面を持ち出してきて、隣地の境界は相談者の所有地まで食い込んでいると主張してきました。話し合いではらちが明かず、隣地所有者は、東京地裁に境界確定訴訟を提起しました。
解決への流れ
第1審の東京地裁においては、相談者の所有権の範囲及び隣地との境界についていずれも当方の主張が認められる判決を得ました。隣地所有者が控訴し、東京高裁においては、相談者の所有権の範囲を全面的に認める判断がなされたものの、公法上の境界については、隣地所有者の主張に沿った協会が確定しました。隣地相談者から上告受理の申立てをしましたが、棄却で終了しました。
境界確定訴訟というのは、法務局に備え付けられている公図における両土地の境界線、すなわち登記されている土地の筆毎の境界(筆界)を確定させるための訴訟です。本来、筆界は、公法上の境界であり、私人間の訴訟で決定するはずのものではないのですが、戦前の裁判所構成法において境界確定訴訟の類型を認めていたのを、戦後も引き継ぎ判例・実務慣行上認められている訴訟類型です。しかしながら、公法上の境界を決めるのですから、原告・被告が和解をすることもできないのです。ですから、多くの境界確定訴訟というのは、実質的には「所有権確認訴訟」であり、弁護士でも境界確定訴訟と所有権確認訴訟の区別が分かっていない人もおり、私が境界確定訴訟を提起する場合には、あわせ所有権確認の訴えも提起することとしています。本来ならば、所有権の範囲(所有権界)と公境界は一致するはずですが、歴史的経緯など種々の理由により、本事案のように、東京高裁が所有権界と、公境界を別々に判断するということも起きることとなります。いずれにしても、本事案では、所有権界が自分の主張通り認められたので、一安心ということになりました。